新卒や転職でIT業界に営業として飛び込まれた方はもちろん、起業や独立してフリーランスエンジニアとして活躍しようとされている方にとっても営業に関する前提知識や用語の習得は避けて通れないかと思います。
厄介なのが、技術的な用語はGoogle等で調べれば解説記事がたくさん出てくるのに対して、営業的な用語や業界特有の商習慣というのは検索してもあまり有益な情報が出てこなかったりします。
この記事では営業として一番最初に理解しておく必要がある、「商流」というものを説明してみます。
※なお、ここでの「IT業界」というのはシステム開発(いわゆるSIなど)の分野を前提としています。Webや広告、インターネット業の世界はまた異なる部分もあるかと思いますのでご注意ください。
「商流」とは商売(商品、サービス)の流れを示すビジネス用語です。
(例)
上司「○○案件の商流はどうなっているかな?」
部下「ウチの仕入れはA社で、B社→エンドユーザーの予定です。」
この場合、A社から仕入れてそれをB社に販売し、B社から最終的な顧客企業に販売するという流れになります。
これ自体はIT業界に限らないどこの業界にもある用語です。
IT業界(特にシステム開発の分野)の事情として多段商流が非常に多いというのがあります。
多段商流とは読んで字のごとく商流が多段階に渡ることを指し、営業経験の浅いうちは登場人物(企業)の多さに頭を抱えることになります。
例えばA社がどこかにシステムを開発してほしいと考えたとき、シンプルにするなら技術力のある開発会社に声をかけて、
システム開発会社→A社
の2社の商流で完結できるはずですよね?
しかしながら実際には
E社→D社→C社→B社→A社
F社→ ↑ ↑
G社→→→→↑
のような複雑怪奇な商流になることが頻繁にあります。(「商流が深い」などと言ったりもします。)
多段商流になる理由は、発注会社側(A社)、システム開発会社側(B~G社)の双方にあります。
■発注会社側の理由
■システム開発会社側の理由
もちろん、これ以外の理由もありますが発注側、開発側両方の要望で結果的に商流が複雑になるというわけです。
もう一度先程の商流の例を見てみましょう。
E社→D社→C社→B社→A社
F社→ ↑ ↑
G社→→→→↑
これを先程の理由に当てはめてみます。
このように、各社の思惑が組み合わさって多段商流が生まれているわけです。
では多段商流にはデメリットはないのでしょうか?
もちろんあります。
このように、可能なら商流はシンプルであるに越したことはないのですが、現実的には多段商流の解消は難しいものです。
商談、提案活動をしていくにあたって商流をきっちり把握するだけでも、
などの情報が見えてくるようになります。
例えば、発注企業(A社)までの間に何社も会社が挟まっている状況だと自社の担当範囲ではあまり多くの利益を乗せる余裕はなさそうだと判断できますし、親会社からの依頼であれば競合はほぼいないと判断できます。
実際にはもっとたくさんの考えるポイントや抑えるべき情報がありますが、案件の話をもらった段階でまず最初に商流を確認することで最善の初動が取れるのではないかと思っています。
ある程度経験を積んだ営業マンであれば特に意識するまでもなく商流は確認していると思いますが、商流が複雑であればあるほどそこから得られる関係各社の意図というのも把握しやすくなるものです。
この記事ではあくまでIT業界の商流のごく基礎的な部分を解説しました。
実際には実務経験を通じて理解を深めていく必要がありますが、まずは基本的な理解のきっかけになれば幸いです。